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現代によみがえった「ちりめん細工」

日本玩具博物館がちりめん細工の復興に取り組んだ動機は『「ちりめん細工」を命名した日本玩具博物館 井上重義館長の思い』で説明していますが、個々の作品も当館のちりめん細工講師が創作し、書籍に発表したものが多いのです。

ちりめん細工のつるし飾り - Hanging decoration

雛の季節になると明治頃から各地で、雛段の周囲で木の枝に手まりを吊るしたり、輪に押し絵やちりめん細工を吊るして飾る行事が行われていました。それが次第に寂れました。しかし、1998年に伊豆稲取温泉で雛祭りに吊るし飾りが復活すると、それが引き金になり、全国的なつるし飾りブームが起きました。昔は天井から吊るされることが多かったのですが、住宅環境の変化により、最近では飾り台につるすことが一般化しました。

以前は雛の季節に飾られましたが、現在は四季折々に季節感のある花・鳥・人形などを吊るして風情を楽しむ、つるし飾りが作られるようになりました。当館では講師の皆様方が創意工夫して作られた、素晴らしいつるし飾りの数々を『つるし飾りの基礎』日本ヴォーグ社などで発表してきました。春は「桜の輪下げ」や「雛の輪下げ」。夏は「朝顔の一連飾り」や「蓮の花と蛙の二連飾り」。秋は「ほうずき尽くしの二連飾り」や「菊の一連飾り」。冬は「鴬と梅の二連飾り」や「椿の一連飾り」など。それに「おもちゃ尽くしのつるし飾り」「和菓子のつるし飾り」など。ご覧いただければ感動される作品の作り方が公開されています。

ちりめん細工の傘飾り - Umbrella decoration

山形県酒田市の本間美術館所蔵の「風間家雛飾り」には「傘福」と呼ばれる明治時代の傘飾りがあり、近年、雛のつるし飾りブームの中で注目を集めてきました。2006年春、酒田市では、町おこしの題材として雛祭りに傘福を取り上げて大きな反響を呼びました。しかし、実際に、酒田をはじめとする庄内地方において、本来「傘福」は、観音堂に安産や子どもの成長を願って納められたもので、雛祭りに「傘福」を飾る風習が伝えられてきたわけではありません。

長年にわたってちりめん細工の復興に取り組んできた日本玩具博物館では、傘は「末広がり」、また傘の略字の「仐」が八十と読めることから、長寿の祝いと結び付いていたことに注目し、「傘飾り」と名付けました。新春、雛祭り、七夕など、四季の儀礼と花鳥風月をテーマとして、制作に取り組んできました。
なお、これまで利用していた産地の和傘(小)が製造中止になったため、現在は和傘飾り制作の取り組みはしておりません。

花 - Flowers

季節感のある梅・桜・桃・花菖蒲・あじさい・菊・ほおずき・松笠などの袋物は、古くから作られてきました。それらを見栄えよく修正し、講師陣が創作した菜の花袋・ばら袋・大山蓮華袋・糸菊袋ほか、美しい花袋の数々を書籍に発表してきました。

動物 - Animals

鶴・鳩・金魚・鯛・兎・ねずみ袋などは、古くから作られてきました。招き猫・犬張り子・蛸袋ほか、干支の作品の数々も講師の皆様が創作し発表してきました。

人形 - Dolls

這い子人形・座り人形・三番叟人形・唐子人形などが古くから袋物として作られてきました。
文化人形・おくるみ人形・ひな人形ほか、多くの作品を講師が創作し発表してきました。

袋物と小箱 - Bags and Small Boxes

四角形や六角形などの、色とりどりの小裂を縫い合わせて外袋を形づくり、中に内袋を仕込んで仕上げます。千筋袋・矢羽根文様袋・五角袋など小裂の接ぎ方や取り合わせ方によって、同じ文様の袋物でも、様々な表情を見せてくれます。
日本に古くから伝わるパッチワークといえるでしょう。

市松文、亀甲文、菱文、桧垣文、七宝文、立涌文などの袋物は、江戸時代後期、あるいは、それ以前から伝えられたものを参考に、現代的な色彩感覚を盛り込んで制作されたものです。小さな子どもの手提げ袋として、また旅で活躍する小物入れや裁縫袋としての実用性をもった楽しい作品の数々です。

小箱は丸形・四角・五角・扇形など様々な形の美しく可愛い小箱を作ります。

ちりめん細工の玩具 - Toys

大正時代には女学校の教科書として、「子どもにとって安全で教育上価値のある玩具を布で制作する方法を明らかにする」という趣旨で、『裁縫おもちゃ集』(大倉書店刊/大正5年)が書かれ、でんでん太鼓や風車、犬張り子などの郷土玩具の形を取り入れたちりめん細工のおもちゃが数多く誕生しました。こうした流れを受けてちりめん細工の玩具が復元・創作されました。

犬張り子、人形や動物のお手玉、傘独楽、串馬、とんだりはねたり、桃とり猿、花独楽などの伝統玩具が、やさしい風合いをもつ縮緬によってよみがえりました。

暮らしを彩るちりめん細工 - Color your life

裁縫に必要な指ぬきや針刺し、蓋のデザインに創意工夫がこらされた丸箱や五角箱、名刺入れや懐紙入れ、押絵で模様をあしらったポチ袋など、日常生活を楽しくする実用的な作品もあります。

また、小裂を縫いつないで作るちりめん細工の後に、さらに残った端裂を使い、小さな重箱の中のご馳走、貝殻を包んで作る動物、花のブローチや動物の根付…など、遊び心にあふれ、愛らしい作品が誕生しています。